動物病院業界についてー有限会社中嶋久男建築研究所様対談

- 株式会社ねこのタミ:
- 簡単に自己紹介いただければ幸いです。
- 有限会社中嶋久男建築研究所さん:
- 私たちは元々は歯科医院の設計を長らくしていたのですが、その後、動物病院へとシフトしました。動物病院を担当していくと、もうほとんど今は動物病院さんのお話が多くなっております。やはり動物病院さんは非常に勢いのある業界だと思います。
歯科医院様は数が多く、過当競争になっていてなかなか厳しいと思います。歯科医院の数が多いと、豪華にしたり、女性に受けるような内装にしたり、プライシーを守るような設計にしたりと差別化が大切になってきます。
その辺は動物病院さんも重なってる部分ではないかなと思ってまして、歯科医院の設計をしていた経験がある程度生きてると思っています。 基本的にクリニック全般に言えることなのですが、各科目それぞれノウハウがあり、1 つできたから全部できるわけじゃないです。なので、非常に深い専門的な設計になってきます。やはりその経験、ノウハウとかがやはり大事になってくると思っております。 - 株式会社ねこのタミ:
- 中嶋先生の方で年間大体何件程携わっているのですか?
- 有限会社中嶋久男建築研究所さん:
- そうですね。しっかり数えたことはないのですが、案件が重なって動くのですが、大体年間20件は超えてくるかと思います。約25年ぐらいで約300件程は超えてきているかと思います。
- 株式会社ねこのタミ:
- 次にちょっと具体的に設計さん、工務店さんだとかそういった質問をさせていただきたいのですが、皆さん金額がまず気になるところだと思うのです。1次診療、1.5次診療、2次診療、坪数とかにも変わってくると思うのですが、大体の予算感を教えてもらってもいいですか?
- 有限会社中嶋久男建築研究所さん:
- 1次診療と1.5次診療、2次診療とでは何が違うかと言うと、特殊な設備が必要になってくるかどうかです。例えば、MRIとかCTとかが入るとそれを作るスペースなども含め金額はやはり大きくなります。手術室についてもクリーンルーム仕様にしたい、滅菌室とかを分けて作りたいなど複数の要望があればある程、費用が重んでくるかなと思います。新築の場合・テラントの場合など色々あるため、一概にいくらとはなかなか言えないのですが、1.5次は1次診療から3割増と捉えてもらえるといいです。
- 株式会社ねこのタミ:
- 1次診療の30坪ぐらいのケースが多いと思うのですが、ざっくりいくらぐらいになりそうですか?
- 有限会社中嶋久男建築研究所さん:
- 大体、多いのは2,000万円前後ぐらいで感じですね。例えば入り口がなくてシャッターしかないテナントなどもあります。そうなったら入り口も作らないといけなかったり、自動ドアにしたいとかになってくると金額は変ってきます。
- 株式会社ねこのタミ:
- 一番最初にファーストコンタクトとして、テナントを探すという方がほとんどだと思います。そういった時に「こういうテナントだったらやりやすい」「お金がだいぶ削れる」など探すポイントはあるのですか?
- 有限会社中嶋久男建築研究所さん:
- まずテナントを決める時に工事が安くできるから決めるって方はまずいないです。ただ抑えたいって方がほとんどです。テナントでも動物病院さんとして使いやすい形というのがあります。1つが圧倒的に間口が広いことが大事です。奥行きに対して間口が広いと圧倒的に使いやすいです。
- 株式会社ねこのタミ:
- 逆に奥行きが長いやつは使いにくいという感じですか?
- 有限会社中嶋久男建築研究所さん:
- その場合、無駄な動線が出やすくなります。 どっちかというと、 縦長みたいなんじゃなくて四角形みたいな方が 使いやすいです。
- 株式会社ねこのタミ:
- たまに円形みたいなところとかもあるかと思います。それが如何ですか?
- 有限会社中嶋久男建築研究所さん:
- 壁側の方がどうしても使えない部分が出てきます。面積が多い割にはちょっと使い勝手が悪いといったこともあります。
- 株式会社ねこのタミ:
- テナントを探す場合はなるべく四角とか間口が広いところが広いところを探すという感じですね。
- 有限会社中嶋久男建築研究所さん:
- ただそんなにいい条件のテナントはそんなにないので、うまく工夫することが大事になってきます。通常の動物病院さんっていうのは三層~四層構造になってまして、手前に待合室があって、 次に診察室があって、奥に検査関係があってという具合です。それが縦長になると、それを繋ぐ通路が欲しくなってきます。その通路をうまく生かし(例えば収納)広さを感じた場合、成功だと思います。ただ現実的になかなか難しいのも事実です。 あともう1つ、柱が真ん中にあるタイプは難しいです。うまくプランを作っていくことを求められます。柱が端っこにある部分には全く問題ないと思います。
- 株式会社ねこのタミ:
- ちなみによくテナントを探していると、スケルトンになっていない状態もあるかと思います。まずはスケルトンにするという工程を挟むと思いますが、いくらぐらいかかりますか?
- 有限会社中嶋久男建築研究所さん:
- 最近でも1件あるんですけども、解体業者さんに見てもらったんですけどもやはり数百万ぐらいになります。15坪で200万ぐらいですかね。
- 株式会社ねこのタミ:
- スケルトンにするのでも結構費用がかかるのですね。
- 有限会社中嶋久男建築研究所さん:
- お金がかかるからこの場所が悪いわけじゃなくて、内装費とか撤去費なんかもかかったとしても要はその患者さんに来てもらえればいい話なんですよね。
- 株式会社ねこのタミ:
- 今、施工料金が上がってるとよく言われるのですが、どの部分が上がってるのですか?
- 有限会社中嶋久男建築研究所さん:
- 一時期材料費が上がってたんですけど、建築材料費ですね。それがバンと上がった時期があったのですが、最近はちょっと落ち着いてきています。そして、人件費です。 職人さんの日当が上がってます。やはり職人さんからすれば、より高い単価の現場に行きたいわけですから、安いところは受けられないといったケースも出てきます。
- 株式会社ねこのタミ:
- なるほど。建築費が上がって、その後に職人さんたちの人件費と二段階で上がっている感じですね。
- 有限会社中嶋久男建築研究所さん:
- 今、建設業は活況でして、強い立場になっています。例えば、建物を建てたいって方(建物が少しコンパクトで複雑な案件)がいらっしゃるんですけども、7件にあたって1件しか見積も取ってもらえず、あとは断られたというケースもあります。よく言われるのは例えば「 1年間の予定もいっぱいです」「1年後にだったら受注できるかもしれない」みたいなことを仰います。でも動物病院さんってもう決めたら、そんな待ってらんないので、なかなか厳しいかなと思います。
- 株式会社ねこのタミ:
- 次に設計士さんを使わないパターン(工務店だけに依頼する)は良さもあれば、悪さもあると思います。素人からすると、何が違うんだろうという疑問を抱くのですが、その辺を教えて頂けたら幸いです。
- 有限会社中嶋久男建築研究所さん:
- 約20 年ぐらい前は動物病院を設計する事務所は少なかったです。どうしてかと言うと、先生方がスケッチを書いて、公務店さんに渡して、それを図面化する作業を取っていました。先生方は動物の診療に対してはプロですが、設計のプロではないので、そうなると、色々と支障が出ています。そういうこともあり、最近ではほとんどの動物病院は設計事務所を間に挟むようになっています。
- 株式会社ねこのタミ:
- 設計士さんを入れることによって、より最適な導線とかが作れるイメージでしょうか?
- 有限会社中嶋久男建築研究所さん:
- そうですね。そして、提案ができるかが大事です。お客さんから言われた要望をそのまま詰め込むのではなくて、「こういう風にすればもっとこうなります」という提案がどのくらいできるかがやはりプロとの違いだと思います。
- 株式会社ねこのタミ:
- 公務店さんとかに直に依頼するとなると そこら辺の導線とかがうまくいかなくなったりする可能性があるという感じですね。
- 有限会社中嶋久男建築研究所さん:
- そうですね。うまくいってないってことにさえ気づかないと思います。 1つ、2つなど病院を経験されてから、関業されることが多いと思うのですが、その病院の中のことは分かっても、その他の病院のことは分からないんですね。「こういう考え方もあります」と運用の仕方で解決できる場合もあります。そういうところまで提案できるかが大事です。
- 株式会社ねこのタミ:
- 動物病院の設計士さんと何人かとお打ち合わせしたこともあるのですが、設計士さんによって違いはあるんですか?
- 有限会社中嶋久男建築研究所さん:
- それは多少あると思います。やはり設計士さんは個々に特徴やこだわりがあったりします。何に重点を置いてるかというところも違うと思います。 コスト、デザイン、アイデアを追求する部分・提案できるような内容は違ってくると思います。ただ同業者の方とも話してくと、やはり基本的なベースはそんなに変わらないかなと思います。 詳しく知ってた方がコストが下がる場合もあります。例えば、レントゲン室の設計なども人の病院・歯科医院と同じにすると過剰にコストがかかってしまうといったこともあります。
- 株式会社ねこのタミ:
- 動物病院を経験したことない設計士さんとかに依頼するのはあんまりよろしくなかったりするのですか?
- 有限会社中嶋久男建築研究所さん:
- 誰でも最初に1件目はあるわけですよ。 なので私も1件目の時はちょっと勉強させていただいたのですが、基本的にクリニックやってますと似ている部分は多いです。1件目2件目を経験したら徐々に把握していくのだと思います。何でもそうですけど、1 件目がないと始まんないですからね。
| 設計のポイント | ・動線は「受付、待合、診察、検査/処置、再診察、会計」が一般的な流れ。 ・検査・処置から各部屋が直視・管理できる構造が使いやすい。 ・テナントの床下に空間があると、排水の自由度が高くなる。 ・天井が高すぎると、一部下げることも。 ⇒高すぎると「狭く見える」「空調効率が悪い」「収納が使えない」。 ・コンビニ跡地で「間口広・奥行浅」が理想。 ⇒ただし広すぎることが多く、バックヤードを作り初期工費を抑える構成。 将来増築できる設計(CT室、入院室の拡張、診察室追加など)。 |
|---|---|
| 部屋の分け方 | ・犬用・猫用の待合を分離することが多い。 ⇒音に敏感な猫のため、一部を防音+分離配置。 |
| 理想のテナント形状 | ・間口が広い/奥行きがそんなに長くない/柱が中央にない ⇒コンビニ跡は非常に使いやすい。 |
| 飲食店跡のデメリット | ・排水に油が溜まりやすく、虫・臭いの問題。 ⇒配管リセットで+100万円前後追加になる場合も。 |
| 事務所跡のデメリット | ・水回りが極端に少なく、排水の確保が難しい。 ⇒床上げまたは排水ポンプで対応は可能。 |
| ガスは必須ではない | ・トリミング強化ならガスが有利。 ⇒そうでなければ電気給湯器で十分。 |
| 工事期間の目安 | ・打ち合わせ:1.5〜2ヶ月 ・工事:1ヶ月(規模30坪前後) ⇒合計3ヶ月で完成するイメージ ⇒「工事が始まってから決める」のは混乱のもと。着工までに全て決めておくのが鉄則。 |
ゲスト
Profile

有限会社中嶋久男建築研究所
代表 中嶋 久男
歯科医院や動物病院を中心に、住宅や店舗を含め約300件の設計に携わってきました。現場での経験、時には失敗から学んだことも含め、すべてが私の大切な財産です。しかし、その経験に満足することなく、常に新しいデザインとより良い空間のあり方を追求し続けています。